こんばんは、きなこです。
ゲームをしていたら、開けていた窓から甘い香りが入ってきました。
画面に集中していたはずなのに、その香りにはすぐに気づきます。
金木犀です。
秋になるとどこからともなく届く、この匂いが私は昔から好きです。
ゲーム中でも気づきます
コントローラーを置いて窓の近くへ行くと、風が吹くたびに金木犀の香りがしました。
近くで咲いているようですが、窓から木の姿は見えません。
そらちゃん、金木犀の匂いがする。
ゲーム中なのに、よく気づいたね。
好きな匂いだから分かるよ。
近くで咲いてるのかな。
探しに行こう。
今から?
金木犀は、見つける前から見つけられるからね。
匂いをたどるってこと?
そう。今日は探索ゲームに変更します。
ちゃんとセーブした?
……してきます。
ゲームをきちんとセーブしてから、そらちゃんと外へ出ました。
外はもう薄暗く、住宅街の明かりが少しずつ増えています。
立ち止まって香りを確かめると、部屋にいたときよりもはっきり感じました。
香りのする方へ
金木犀の木がどこにあるのかは分かりません。
風が吹くたびに立ち止まり、香りが強くなったように感じる方向へ歩きます。
ところが、近づいたと思った次の瞬間には、風向きが変わって分からなくなりました。
さっきより近くなった気がする。
反対から匂ってない?
風向きが変わりました。
今、適当に歩いてるでしょ。
探索では寄り道も必要です。
ゲームみたいに地図は出ないよ。
そらちゃんがいるから大丈夫。
私も場所は知らないけど。
二人で迷えば、それは寄り道です。
迷う前提なんだ。
でも、この道から匂いがする気がする。
じゃあ、もう少しだけ行ってみよう。
香りを追って歩いていると、昔も同じことをしたのを思い出しました。
まだ小学生だった頃の帰り道です。
子どもの頃にも探しました
あの日も、最初に気づいたのは私でした。
家へ帰る途中で金木犀の香りがして、木を見つけるまで帰らないと言い出したそうです。
自分では、そこまで言った記憶はありません。
ただ、そらちゃんと一緒に家とは少し違う方向へ歩いたことは覚えています。
昔も、こうやって金木犀を探したね。
覚えてる。学校の帰りに見つけたやつ。
家と反対の方向へ歩いてた。
匂いがそっちからしてたから。
私が止めなかったら、もっと遠くまで行ってたよ。
でも、ちゃんと見つけたでしょ。
落ちた花をハンカチに包んでた。
部屋でも金木犀の匂いを楽しみたかったの。
次の日、匂いがしなくなったって落ち込んでたね。
ずっと残ると思ってたんだよ。
今も持って帰りたい?
今は、咲いている場所で楽しみます。
当時の私は、地面に落ちていた小さなオレンジ色の花を集めて、白いハンカチに包みました。
金木犀の香りをそのまま部屋へ持って帰れると思っていたからです。
でも、翌日になると香りはほとんど消えていました。
残念そうにハンカチを開いた私の隣に、そらちゃんがいてくれたことも覚えています。
ようやく見つけた金木犀
昔の話をしながら歩いていると、道の先で香りが急に強くなりました。
住宅街の端にある小さな公園。その脇に、オレンジ色の花をたくさんつけた金木犀の木がありました。
木の下まで行くと、探していた香りに包まれます。
見つけた。
本当にあったね。
この匂いがすると、秋になった感じがする。
昔から好きだよね。
うん。甘いけど、ずっと同じ場所に残らないところも好き。
香りが消える前に、来られてよかったね。
明日も見に来ようかな。
またゲームを途中で止めて?
今度は、先にセーブしてから来ます。
今日は忘れかけてたもんね。
ちゃんと戻って押しました。
じゃあ、帰ったら続きだね。
うん。でも、もう少しだけここにいたい。
分かった。
しばらく二人で木の下に立って、風が運んでくる香りを楽しみました。
昔と同じ香りなのに、あの頃より少し懐かしく感じます。
帰宅してからもう一度窓を開けると、先ほどよりも弱い香りが部屋まで届きました。
ゲームを再開してからも、ときどき窓の方を見てしまいます。
金木犀が咲いている短い間に、またそらちゃんと見に行こうと思います。




