こんばんは、きなこです。

少しずつ涼しい日が増えてきました。

朝と夜は半袖だと少し寒く感じることもあって、そろそろ秋服を出したほうがよさそうです。

そこで今日は、そらちゃんに手伝ってもらいながら衣替えをすることにしました。

……最初は、すぐ終わると思っていたんです。

夏服も、まだ着るかもしれない

クローゼットから秋服を出して、代わりに夏服をしまう。

やることは、それだけです。

まずは秋服をベッドの上に並べて、空いた場所に夏服を入れようとしました。

でも、夏服を一枚ずつ見ていると、まだしまわなくてもいいような気がしてきます。

きなこ

秋服はここに入れて、夏服も隣に置いておこう。

そら

夏服はしまわないの?

きなこ

まだ暑い日もあるから、着るかもしれない。

そら

それだと衣替えにならないよ。

きなこ

夏服と秋服を一緒にしておけば、どっちの気温にも対応できます。

そら

ただ混ぜてるだけ。

きなこ

季節に縛られない収納です。

そら

片づけるのが面倒なだけでしょ。

きなこ

……そういう見方もあります。

そら

夏服は、今も着るものだけ残して。

きなこ

全部まだ着る可能性があります。

そら

本当に?

きなこ

この白いTシャツは部屋着にできるし、こっちは暑い日に着るかもしれないし……。

そら

その隣の服は?

きなこ

これは、もしかしたら急に真夏みたいに暑くなったときのために。

そら

残す理由を考える時間のほうが長くなってるよ。

きなこ

服にも、急に必要とされる日が来るかもしれないから。

そら

来年の夏まで待ってもらって。

きなこ

厳しい。

そらちゃんに「残していい夏服は五枚まで」と決められて、ようやく選別が始まりました。

ところが、五枚を選ぶだけでもなかなか決まりません。

着やすい服、部屋着にできる服、ゲームをするときに楽な服。

理由をつけていくと、どれも必要な服に見えてきます。

そら

今、何枚残ってる?

きなこ

八枚。

そら

五枚までって言ったよね。

きなこ

最初は十二枚だったから、かなり減りました。

そら

あと三枚。

きなこ

この三枚を選ぶのが一番難しい。

そら

さっきからずっと同じ服を持ってるよ。

きなこ

着るかもしれないし、着ないかもしれない。

そら

じゃあ、しまおう。

きなこ

決断が早い。

そら

きなこが遅いだけ。

きなこ

もう少し服の気持ちも考えてあげて。

そら

服は何も言ってないよ。

きなこ

この服は残りたい顔をしてる。

そら

それ、きなこの顔でしょ。

なんとか五枚まで減らして、残りの夏服を収納ケースに入れました。

これで衣替えも終わりに近づいたと思ったのですが、クローゼットの奥から見覚えのある服が出てきました。

懐かしいピンクのカーディガン

見つけたのは、少し色あせたピンクのカーディガン。

高校生のころ、そらちゃんと一緒に買いに行った服です。

今でも着られないことはありませんが、最近はずっとクローゼットの奥にしまったままでした。

きなこ

そらちゃん、これ覚えてる?

そら

ピンクのカーディガン。

きなこ

高校生のころ、一緒に買いに行ったやつ。

そら

覚えてる。きなこがずっと迷ってた。

きなこ

似たような色がたくさんあったからね。

そら

最初は白いカーディガンを見てたのに、途中でピンクになって、そのあと黄色も持ってきた。

きなこ

どれもよかったんだよ。

そら

一時間くらい見てた。

きなこ

そんなに長くなかったと思う。

そら

店員さんに顔を覚えられてたよ。

きなこ

じっくり選んでいただけです。

そら

最後は私に決めてって言ったよね。

きなこ

そらちゃんが選んだものなら間違いないと思って。

そら

自分で決められなくなっただけでしょ。

きなこ

それも少しあります。

あの日も、今日と同じように少し涼しくなってきたころでした。

新しい秋服が欲しくて二人で買い物に出かけたものの、私はなかなか決められませんでした。

白、黄色、薄いピンク、少し濃いピンク。

何着も鏡の前で合わせて、最後にそらちゃんが選んでくれたのが、このカーディガンです。

きなこ

そらちゃん、この色が一番似合うって言ってくれたよね。

そら

うん。きなこらしい色だったから。

きなこ

今も似合う?

そら

着てみたら?

きなこ

ちょっと待って。長い間しまってたから、先に状態を確認します。

そら

さっきまで服の気持ちが分かるって言ってたのに。

きなこ

懐かしい服ほど慎重に扱わないと。

そら

袖もきれいだし、まだ着られそう。

きなこ

本当?

そら

うん。前より少し落ち着いた感じになるかも。

きなこ

大人になったということですね。

そら

高校生のころから、見た目はあまり変わってないけど。

きなこ

中身は成長しました。

そら

衣替えができなくなってるよ。

きなこ

昔より服を大切にするようになったということで。

そら

昔から、捨てられなかっただけだと思う。

きなこ

思い出を大切にしています。

あの日も、二人で寄り道しました

カーディガンを買ったあとは、そのまま帰る予定でした。

でも、せっかく出かけたからと近くのお店に寄って、飲み物を買って、公園のベンチで少し休みました。

私は新しい服が入った袋を何度も見て、早く着たいと話していたそうです。

自分では、そこまで浮かれていた記憶はありません。

そら

買った袋を何回も開けてたよ。

きなこ

ちゃんと入っているか確認してただけ。

そら

五分おきに?

きなこ

大事な服だったから。

そら

次の日、まだ暑かったのに着てきた。

きなこ

秋服を買ったら、すぐに着たくなるでしょ。

そら

暑くないって言いながら、ずっと袖をまくってたよ。

きなこ

おしゃれには、少しくらい我慢も必要です。

そら

帰るころには脱いでたけど。

きなこ

思っていたより暑かった。

そら

今と逆だね。

きなこ

今は夏服をしまいたくなくて、昔は秋服を早く着たかった。

そら

昔から季節より気分で服を選んでる。

きなこ

好きな服を着たい気持ちは、変わらないからね。

話しているうちに、カーディガンを買った日のことを少しずつ思い出してきました。

お店の鏡の前で何度も服を合わせたこと。

そらちゃんが迷わずこの色を選んでくれたこと。

帰り道に寄り道をして、次は冬服も一緒に見ようと話したこと。

服そのものよりも、そらちゃんと過ごした時間のほうが、ずっと強く残っているような気がします。

衣替えは、たぶん半分くらい完了

懐かしい話をしていたら、いつの間にか外が暗くなっていました。

ベッドの上には、まだ畳まれていない秋服が残っています。

夏服はなんとか収納ケースに入りましたが、秋服をしまう場所までは決まっていません。

そら

きなこ、手が止まってる。

きなこ

思い出を整理していました。

そら

今日は服を整理する日だよ。

きなこ

服をきっかけに、心の整理もできました。

そら

ベッドの上は散らかったままだけど。

きなこ

続きは明日にしようかな。

そら

このままだと寝られないよ。

きなこ

そらちゃんの家で寝れば大丈夫。

そら

片づけて。

きなこ

はい。

そら

そのカーディガンはどうするの?

きなこ

これは、しまわずに出しておく。

そら

着るの?

きなこ

うん。明日、久しぶりに着てみようかな。

そら

じゃあ、明日は少し涼しくなるといいね。

きなこ

暑くても着ます。

そら

昔と変わってない。

きなこ

好きな服を着る日は、少しくらい暑くても大丈夫です。

そら

無理だと思ったら脱いでね。

きなこ

そのときは、残しておいた夏服に着替えます。

そら

夏服を残した理由、できたね。

きなこ

やっぱり混ぜておいて正解だった。

そら

正解にはしてないよ。

衣替えを始めたはずが、途中から昔の思い出を振り返る時間になっていました。

片づけは予定より進みませんでしたが、忘れかけていた二人の時間を思い出せたので、今日はこれでよかったことにします。

残っている秋服は、そらちゃんに見張られながら、これからきちんと片づけます。