こんばんは、きなこです。🌸

文化の日の今日は、お絵描きをすることにしました。

朝は机の上のペンタブとコントローラーを見比べていたんですけど、せっかく芸術の秋ですからね。

ゲームは、あとでもできます。

……とりあえず、コントローラーには机の端で待っていてもらうことにしました。

今日のモデル、見つけました

描く準備をしていると、そらちゃんが遊びに来ました。

きなこ

今日は文化の日だし、絵を描くことにしたよ!

そら

ゲームじゃなくて?

きなこ

ゲームはあとでもできるし!

そら

……さっきまで迷ってたのに。

きなこ

ふふっ、決断が早いのも私の長所です!

決めるまでの時間については、今は触れないでいただきたいです。

椅子を寄せたそらちゃんの青い髪に、窓からの光がふわっと当たりました。

あ、この感じ、描いてみたい。

そう思ったら、今日何を描くかも決まりました。

きなこ

そうだ! 今日はそらちゃんを描こうかな!

そら

……私?

きなこ

うん! モデルになって!

そら

……いいけど。どうすればいい?

きなこ

いつもどおり座っててくれれば大丈夫!

そらちゃんは少しだけ背筋を伸ばして、膝に手を置きました。

いつもどおりでいいと言ったんですけど、ちょっと緊張してるのかな。

……そういう私も、なんとなくペンを持ち直してしまいました。

こっちを向いてって言ったけど

まずは大まかな輪郭から。

画面とそらちゃんを交互に見ながら、少しずつ線を引いていきます。

しばらくすると、そらちゃんの顔が、すっと横へ動きました。

きなこ

そらちゃん、ちょっと動かないで!

そら

……ごめん。画面、気になって。

きなこ

あとで見せるから! あと、もう少しこっち向いて!

そら

……こう?

言われたとおり、そらちゃんがこちらを向きます。

そして、そのまま私をじっと見つめてきました。

……。

…………。

きなこ

……そんなに見られると描きにくいんだけど!

そら

きなこが、こっち向いてって言った。

きなこ

そ、そうだけど!

そら

……どこ見ればいい?

きなこ

えっと……私の肩のあたり、とか。

そら

……うん。

いつも一緒にいるのに、モデルさんとして向き合うと、なんだか違うんですよねぇ。

普段は平気で顔を見て話しているはずなのに。

そらちゃんは素直にお願いを聞いてくれているだけなので、困っているのは完全に私の都合です。

……よし。落ち着こう。描くのは私です。

描いているところも、気になるみたいです

同じ姿勢のままだと疲れてしまうので、ときどき休憩を挟みました。

そらちゃんが肩を軽く回している間に、私は画面を見直します。

今度は、そらちゃんが椅子を寄せてきました。

そら

……この薄い線も、絵の一部?

きなこ

これは下描き。あとから消したり、描き直したりするんだよ。

そら

一回で描くんじゃないんだ。

きなこ

うん。私も、何回も直すよぉ。

そらちゃんは小さくうなずいて、画面を眺めていました。

完成した絵だけじゃなくて、描いている途中も気になるみたいです。

お昼ごはんを食べてから、午後も少し続きを描きました。

さらっと落ちる青い髪や、目元の落ち着いた感じ。

よく知っているはずなのに、描こうとすると、もう一度ちゃんと見たくなります。

そら

きなこ、描くの楽しい?

きなこ

うん! 好きなものを描いてる時間って、楽しいんだよね。

そら

……そっか。

そのとき、そらちゃんの口元が少しだけ緩みました。

あ、今の表情、いいな。

覚えておこうと思いながら、私はまたペンを動かしました。

完成しました。モデルさん、どうですか?

髪の色を整えて、最後に目元を見直して。

少し離れて画面を眺めてから、私はペンを置きました。

きなこ

完成~! そらちゃん、どう?

そらちゃんから見やすいように画面の向きを調整すると、そらちゃんが身を寄せてきました。

そら

……すごい。

きなこ

ふふっ、なかなか上手に描けたでしょ?

そら

うん。……嬉しい。

完成したそらちゃんの似顔絵を見せるきなこ。そらちゃんも控えめな笑顔で画面を眺めています。
完成したそらちゃんの似顔絵を見せるきなこ。そらちゃんも控えめな笑顔で画面を眺めています。

大きな声ではないけれど、その言い方が嬉しそうで。

私もつい、画面よりそらちゃんの顔を見てしまいました。

きなこ

……あとで見られるように、送ってあげるね。

そら

ありがとう。

画像を保存して送ると、そらちゃんは自分の端末でも開いて、少し拡大して見ていました。

そんなにじっくり見られると、今度は絵のほうが照れてしまいそうです。

でも、気に入ってもらえたなら、今日は大成功かな。

今度は、私がモデル?

そろそろ片づけようかな、と思っていたところで、そらちゃんが声をかけてきました。

そら

ねえ、きなこ。

きなこ

ん?

そら

今度は私が、きなこを描いてもいい?

きなこ

えっ!? そらちゃんが!?

そら

うん。ちょっと描いてみたい。

少し意外で、私はそらちゃんを見返しました。

そらちゃんは照れたように視線を画面へ戻して、それから、また私を見ます。

私が描いていた時間を見て、自分もやってみたいと思ってくれたんだ。

そう思うと、なんだか嬉しくなりました。

きなこ

もちろん! じゃあ、今度は私がモデルだね!

そら

……じっとしてられる?

きなこ

それは……頑張ります!

そら

……うん。

きなこ

でも、コーラ休憩はあってもいい?

そら

……まだ始まってないよ。

二人で、ちょっと笑ってしまいました。

どんな絵になるかは、まだわかりません。

でも、そらちゃんが私を見ながら描いてくれるところを想像したら、今から少し楽しみです。

机の端では、コントローラーがまだ出番を待っていました。

ゲームもしたかったけど、今日はお絵描きを選んでよかったなぁ。

それでは、またね。🌸