こんばんは、きなこです。
夕方、そらちゃんの家に寄ると、玄関を開ける前からいい匂いがしました。いつもならお茶を入れて待っているそらちゃんが、今日はキッチンに立っています。鍋からは白い湯気。にんじんとじゃがいもが見えました。
そらちゃんが作る、夕方のクリームシチュー
そらちゃん、料理してる。
その言い方だと、普段まったくしてないみたい。
だって、シチューを作ってるのは珍しいから。
今日は少し冷えたから。温かいものが食べたくなったの。
私も今、ちょうど温かいものが食べたかったところ。
匂いをかいでから決めたでしょ。
そこは秘密です。
そらちゃんが木べらで鍋をひと混ぜすると、野菜とクリームの匂いがふわっと広がりました。私は隣でパンをお皿に並べる係。並べ終わっても、シチューができるまではもう少しだけ時間がかかります。
「あと何分?」と聞くたびに、そらちゃんの返事は「もう少し」。その間に、私のお腹は二回鳴りました。
ご飯の前のプリンは見つかる
コップに水を入れようと冷蔵庫を開けたとき、棚の奥にプリンが見えました。昨日、二人で買って帰ったものです。
一個くらいならシチューも食べられる。そう思って、そっと手を伸ばしました。

きなこ。
……水を取ろうと思って。
水はドアの手前。今、手を伸ばしたのは奥。
よく見てるね。
プリンは食べたあとにしよう。
待ってる間に溶けたりしない?
プリンは溶けないよ。
じゃあ、安心して待てます。
そらちゃんに袖をつままれて、私は冷蔵庫を閉めました。プリンは逃げない。分かっているけれど、いい匂いのする夕飯を前にして、待つ時間だけは長く感じます。
そこで、今度は私がテーブルを拭いてスプーンを並べました。何もしないで鍋を見ているより、そのほうが少し早く夕飯になります。
ふたりで食べる、できたての一皿
ようやく器に注がれたシチューは、湯気までおいしそうでした。そらちゃんが私の分を先に置いて、自分の席につきます。

熱いから、気をつけて。
うん。いただきます。
ひと口すくって、少し冷ましてから食べました。やわらかい野菜に、あたたかいクリームの味。急いで食べるのがもったいなくなって、私はスプーンを持ったまま、もう一度そらちゃんを見ました。
……おいしい。
ならよかった。




