こんばんは、きなこです。

夕方、そらちゃんの家に寄ると、玄関を開ける前からいい匂いがしました。いつもならお茶を入れて待っているそらちゃんが、今日はキッチンに立っています。鍋からは白い湯気。にんじんとじゃがいもが見えました。

そらちゃんが作る、夕方のクリームシチュー

きなこ

そらちゃん、料理してる。

そら

その言い方だと、普段まったくしてないみたい。

きなこ

だって、シチューを作ってるのは珍しいから。

そら

今日は少し冷えたから。温かいものが食べたくなったの。

きなこ

私も今、ちょうど温かいものが食べたかったところ。

そら

匂いをかいでから決めたでしょ。

きなこ

そこは秘密です。

そらちゃんが木べらで鍋をひと混ぜすると、野菜とクリームの匂いがふわっと広がりました。私は隣でパンをお皿に並べる係。並べ終わっても、シチューができるまではもう少しだけ時間がかかります。

「あと何分?」と聞くたびに、そらちゃんの返事は「もう少し」。その間に、私のお腹は二回鳴りました。

ご飯の前のプリンは見つかる

コップに水を入れようと冷蔵庫を開けたとき、棚の奥にプリンが見えました。昨日、二人で買って帰ったものです。

一個くらいならシチューも食べられる。そう思って、そっと手を伸ばしました。

夕飯前に冷蔵庫のプリンへ手を伸ばすきなこを、そらがやさしく止める。
夕飯前に冷蔵庫のプリンへ手を伸ばすきなこを、そらがやさしく止める。
そら

きなこ。

きなこ

……水を取ろうと思って。

そら

水はドアの手前。今、手を伸ばしたのは奥。

きなこ

よく見てるね。

そら

プリンは食べたあとにしよう。

きなこ

待ってる間に溶けたりしない?

そら

プリンは溶けないよ。

きなこ

じゃあ、安心して待てます。

そらちゃんに袖をつままれて、私は冷蔵庫を閉めました。プリンは逃げない。分かっているけれど、いい匂いのする夕飯を前にして、待つ時間だけは長く感じます。

そこで、今度は私がテーブルを拭いてスプーンを並べました。何もしないで鍋を見ているより、そのほうが少し早く夕飯になります。

ふたりで食べる、できたての一皿

ようやく器に注がれたシチューは、湯気までおいしそうでした。そらちゃんが私の分を先に置いて、自分の席につきます。

できたてのクリームシチューを、そらときなこが並んで食べる夕方。
できたてのクリームシチューを、そらときなこが並んで食べる夕方。
そら

熱いから、気をつけて。

きなこ

うん。いただきます。

ひと口すくって、少し冷ましてから食べました。やわらかい野菜に、あたたかいクリームの味。急いで食べるのがもったいなくなって、私はスプーンを持ったまま、もう一度そらちゃんを見ました。

きなこ

……おいしい。

そら

ならよかった。