昨日は、きなことそらが幼い頃からの幼なじみであることを紹介しました。二人の家は昔から隣同士。きなこがそらの家へ遊びに行くことも、特別な予定ではありません。今日もきなこはゲームとお菓子を持って、そらの家へやって来ました。ただし、遊びに来た人とは思えないほどくつろいでいます。

そら

きなこ、来てからまだ五分だよね?

きなこ

うん。

そら

もうずいぶんくつろいでるね。

きなこ

いつもの場所だからね。

そら

そこ、私の家のソファなんだけど。

きなこ

でも、この端っこは私の定位置でしょ?

そら

そんな決まり作った覚えないよ。

きなこ

気がついたら決まってたのです。

そら

きなこが毎回そこに座ってるだけでしょ。

きなこ

長く座り続けた人には、定位置として認められる権利があるんだよ。

そら

初めて聞いた。

きなこはソファに座ると、持ってきたゲーム機をテレビにつなぎました。テーブルにはコーラとお菓子を並べ、スマートフォンを充電器へ接続します。一つ一つの動きに迷いはありません。

きなこ

そらちゃん、コーラもらったよ。

そら

もう飲んでるね。

きなこ

ちゃんと報告しました。

そら

それは許可を取ったとは言わないよ。

きなこ

冷蔵庫の右側にあるコーラは、私が飲んでいいやつでしょ?

そら

きなこが来たとき用に置いてあるけど。

きなこ

ほら、やっぱり私のコーラじゃん。

そら

私が買ったんだけどね。

きなこ

いつもありがとうございます。

そら

急に素直。

きなこ

感謝の気持ちを忘れない立派な訪問者です。

そら

訪問者は勝手に冷蔵庫を開けないと思う。

ゲームを始めようとしたきなこは、テーブルの上にあるピンク色の充電器を手に取りました。それは、何度も充電器を忘れるきなこのために、そらが用意しておいたものです。

きなこ

そらちゃん、私の充電器ここにあったんだ。

そら

ここはきなこの家じゃないよ。

きなこ

でも、ピンクだから私用だよね?

そら

毎回忘れるから用意しただけ。

きなこ

私専用のコーラと、私専用の充電器と、私の定位置……。

そら

勝手に話をまとめないで。

きなこ

そらちゃんの家にも、私の生活環境が整ってきたね。

そら

これ以上は増やさないからね。

きなこ

次は歯ブラシかな。

そら

泊まるつもり?

きなこ

ゲームが終わらなかったときのために。

そら

帰って。

きなこ

家は隣なのに?

そら

だったらすぐ帰れるよね。

きなこ

隣だから、泊まっても問題ないよね?

そら

どうしてそうなるの?

しばらくすると、そらは飲み物を持ってきて、きなこの隣へ座りました。口ではあきれながらも、ゲームを始める準備はできています。

きなこ

そらちゃんもコントローラー持ってるじゃん。

そら

一緒に遊ぶために来たんでしょ?

きなこ

追い出されるのかと思った。

そら

追い出しても、またすぐ来そうだから。

きなこ

家が隣だからね!

そら

便利な言葉みたいに使わないで。

きなこ

じゃあ、今日はどっちが勝つまでやる?

そら

一回勝負じゃないの?

きなこ

私が勝つまで。

そら

長くなりそう。

きなこ

大丈夫。泊まる準備はできてます。

そら

できてないよ。

自分の家のようにくつろぐきなこと、それを注意しながらも、一緒にゲームを始めるそら。きなこの定位置も、専用のコーラも、充電器も、長い付き合いの中で少しずつ増えていったものです。そらの家なのに、きなこがあまりにも自然に過ごしているのは、それだけ二人が長い時間を一緒に過ごしてきた証拠なのかもしれません。

きなこ

そらちゃんの家、やっぱり落ち着くね。

そら

自分の家よりくつろいでない?

きなこ

だって、飲み物を持ってきてくれる人がいるから。

そら

次から自分で取ってね。

きなこ

さっき勝手に取ったら注意されたよ?

そら

……難しいね。

きなこ

でしょ?