こんばんは、きなこです。🌸
ここ二日ほどの日記を振り返って、私は気づきました。
そらちゃんに髪を乾かしてもらって。
一枚の毛布も、結局ちゃんと分けてもらって。
……私、お世話になりすぎでは?
いや、もちろん。
いつも感謝はしていますよ?
ただ、その感謝を口にする頃には、だいたいもう次のお願いをしている気がするんですよねぇ。
これは、いけません。
たまには私も、そらちゃんにゆっくりしてもらいたい。
そんな私に、ちょうど出番がやってきました。
今日のそらちゃんは、ちょっとお疲れです
その日は、そらちゃんの家に遊びに来ていました。
先に帰っていた私は、リビングでのんびり。
そこへ、用事を終えたそらちゃんが帰ってきたんです。
……ただいま。
おかえりぃ、そらちゃん。
そらちゃんは鞄を置いて、小さく息をつきました。
普段から静かな子ですけど、その日はいつもより肩が下がっているような。
上着を脱ぐ動きも、少しゆっくりでした。
……疲れた?
……ちょっと。
いつもなら、ここで私も「私も疲れたぁ」と言いながら、ソファをぽんぽんしていたと思います。
でも、今日は違います。
私は背筋を伸ばして、そらちゃんに宣言しました。
今日は私がそらちゃんを甘やかしてあげる!
…………。
その間は、何もしなくていいからね。
……何するの?
それは、できてからのお楽しみです。
そらちゃんが、少しだけ首をかしげました。
ふふん。
まあ、見ていてください。
いつもお世話になっている私だって、やるときはやるんです。
くつろぐ準備は、たくさんあるほどいい……?
まずは、温かいココア。
そらちゃんに甘さを聞いて、お湯を少しずつ入れながら混ぜます。
だまが残らないように、底のほうまで。
途中でひと口だけ確かめて……。
うん。
今日は、ちゃんとおいしい。
マグカップは、ソファの前のテーブルへ。
端に置くと危ないので、少し奥に。
次は、お菓子です。
甘いものがあったほうが、疲れも取れる気がするじゃないですか。
クッキーを小皿に載せて。
しょっぱいものも欲しくなるかもしれないから、おせんべいも少し。
それから、ソファにはクッション。
背中にひとつ。
腕を置くところにも、ひとつ。
腰のところにもあったほうがいいかな?
……こっちの柔らかいのも、気持ちいいんですよねぇ。
お菓子のトレーをいったんソファに置いて、クッションの位置を整えて。
もうひとつ持ってきて、並べ直して。
普段なら「そこまでしなくても」と思うようなことも、今日はなんだか楽しくて。
そらちゃんがここでのんびりしてくれたら、と思うと、つい手が動きました。
そして、準備完了。
私は満足して、そらちゃんを呼びました。
そらちゃーん! どうぞ!
……うん。
リビングに戻ってきたそらちゃんが、ソファの前で止まります。
背もたれには、クッション。
座るところにも、クッション。
その隣には、お菓子のトレー。
ふかふかです。
充実しています。
どうですか、この気配り。
……きなこ。
ん〜? なぁに、そらちゃん?
……座れない。
…………あっ。😒
本当だ。
くつろぐためのものを増やした結果、くつろぐ場所がなくなっていました。
そらちゃんが嬉しかったこと
ま、待ってね。今、空けるから。
……うん。
私は慌ててお菓子のトレーをテーブルへ移しました。
クッションも、ひとつ減らして。
もうひとつ、横へ避けて。
……これ、最初の数でよかったんじゃないかな。
張り切っていたぶん、少しだけ恥ずかしくなりました。
……ちゃんと休んでもらうつもりだったんだけど。
……わかってる。
準備してる間は、いい感じだったんだよ?
……見てた。
……見てたの。
そらちゃんは、ようやく空いた場所に座りました。
私はココアのマグカップを手渡します。
熱いから、気をつけてね。
……ありがとう。
そらちゃんは両手でカップを包んで、そっとひと口。
私は、その顔をじっと見てしまいました。
……どうかな。
……おいしい。
ほんと?
……うん。
よかった。
さっきまで忙しく動いていた手が、ようやく止まりました。
そらちゃんはカップに目を落としてから、小さな声で続けます。
……疲れてるの、気づいてくれたんだね。
そりゃ、わかるよぉ。
……うん。それが嬉しかった。
……あ。
私はなんとなく、テーブルの上のお皿を整え直しました。
もう、十分きれいに並んでいるんですけど。
ちょっと、手を動かしていたくなったというか。
……いつも、そらちゃんにしてもらってるからさ。
……うん。
今日は、私が何かしたかったの。
そらちゃんが、ゆっくりうなずきました。
そのときには、帰ってきたときよりも少しだけ、肩の力が抜けているように見えました。
甘やかす係も、隣に座っていいらしいです
ココアも渡した。
お菓子にも、ちゃんと手が届く。
クッションの数も、今度こそ大丈夫。
私はそらちゃんの前に立って、ほかに何かできないか考えていました。
あとは? 寒くない?
……大丈夫。
テレビ、何か見る?
……あとで。
じゃあ、ほかに――
そらちゃんが、空いている隣の席を軽くたたきました。
……きなこも、隣に座って。
……今日は私が甘やかす日なのにぃ。
……一緒に休めばいい。
私は、そらちゃんの顔と、隣の席を交互に見ました。
……それでいいの?
そらちゃんはもう一度、ぽん、と座面をたたきます。
なので、私も自分のココアを持ってきて、隣に座りました。
さっきまでクッションで埋まっていた場所に、今度はちゃんと二人。

そらちゃんがクッキーをひとつ取って、お皿を私のほうへ少し寄せてくれました。
……これじゃ、いつもと同じじゃない?
……今日は、きなこが作ってくれたココア。
……そっか。
……うん。
私は自分のカップを両手で持って、ひと口飲みました。
少しだけ冷めたココアは、ちょうど飲みやすい温かさになっていました。
隣では、そらちゃんが背もたれに体を預けています。
それを見たら、私までほっとしてしまって。
もう何か用意しようとは思わずに、そのまま一緒にテレビをつけました。
今日の甘やかし大作戦は
というわけで。
そらちゃんを甘やかそうと張り切った結果、一度はソファを使えなくしてしまいました。
……そこは、反省しています。
でも、ココアはおいしくできたし。
そらちゃんも、少しゆっくりできたみたいだし。
今日は、成功ということにしていいでしょうか。
帰る前、そらちゃんが空になったカップを見ながら言ってくれました。
……また、作って。
ココア?
……うん。
……ふふん。いいですよぉ。
次はもっと、手際よくできると思います。
クッションも、増やしすぎません。
たぶん。
それでは、またね。🌸
きなこでした!




